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特定社会保険労務士ブログ

5年ルール

労働契約法の改正により、「5年ルール」(有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換させる仕組み)が導入されましたが、再雇用の高齢者について5年ルールの適用外とするようです。
昨年12月に任期付き(テニュア・トラック制など)の研究職について期間を10年に延ばす「特例」が成立済みですが、この特例もさらに対象が拡大されそうな雰囲気です。
5年ルールの適用を避けるために、企業が更新限度を設定したり、不更新条項を設けたりする「副作用」は、当然予想されたことですが、それでも「このまま放置してはいけない」という危機感から敢えて導入されたという経緯があるので、もう少しじっくり見守る必要があるのではないか、と思います。
実際、労働政策研究・研修機構(JILPT)などの調査結果を見ると、契約更新の厳格化や抑制の動きは、それほど大きくはないようです。
確かに、早稲田大学のように「事件」になっているところもありますが、労働法の教授が学長を説得し5年ルールを受け入れさせた大学もあると聞きます。
無期転換=正社員化ではないので、人件費はさほど上昇する訳ではない、という説明が決め手になったとのこと。
新ルールに対する批判や過敏な反応は、5年ルール=正社員化という大きな誤解に基づいている気がします(もちろん、正社員化でないから生温いという、逆方向の批判も考えられますが…)。
なお、すでに労働者が雇用継続への期待を合理的に抱いている場合、使用者が5年ルールの適用を避けるために更新限度等を設定したとしても、そのことだけでは有効とは認められない、つまり、雇止めは無効と判定されるはずです。


 

パタニティ・ハラスメントに関する調査

日本労働組合総連合会(連合)が、パタニティ・ハラスメント(パタハラ)の実態に関する調査結果を発表しています。
子どもがいる525人のうち、職場でパタハラをされた経験がある人が11.6%にのぼり、 内容としては、「子育てのための制度利用を認めてもらえなかった」、「子育てのために制度利用を申請したら、上司に『育児は母親の役割』、『育休をとればキャリアに傷がつく』などと言われた」などが挙がっています。
http://www.jtuc-rengo.or.jp/news/chousa/data/20140123.pdf
なお、パタニティ・ハラスメント(パタハラ)とは、マタニティ・ハラスメント(マタハラ)の男性版で、男性社員とはこうあるべきだという先入観により、上司が部下の育休取得を妨げるなどの嫌がらせ行為を呼ぶのだそうです。

 

パートタイム労働者雇用管理セミナー〔事例編〕

厚生労働省委託事業「パートタイム労働者雇用管理セミナー」の事例編に参加しました。

 パートタイム労働者雇用管理セミナー〔事例編〕
~事例にみる職務(役割)評価を活用した賃金制度設計及び導入の実務~
第Ⅰ部
1 職務(役割)評価とは?
2 職務(役割)評価で分かること
3 制度設計
第Ⅱ部
事例1 職務(役割)評価を活用し、パートタイム労働者の賃金制度を構築した事例
事例2 職務(役割)評価を用いて、パートタイム労働者のモチベーション向上に資する格付け制度を構築した事例
職務(役割)評価を活用する際のポイント
 
職務(役割)評価が、パートタイム労働者の均等・均衡待遇を確保するために必要な指標(モノサシ)であることはよくわかりました。

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パートや契約社員などの雇用管理を考える

厚生労働省委託事業、シンポジウム「パートや契約社員などの雇用管理を考える~多様な人材の活躍を企業の活力に~」に参加しました。

基調講演「事例に学ぶ 非正規雇用の労働者 採用・定着・戦力化の成功法則」 株式会社働きかた研究所代表取締役 平田未緒氏
事例研究「非正規雇用の労働者のキャリアアップに向けた取組みについて」 みずほ情報総研株式会社コンサルタント
助成金のご説明「キャリアアップ助成金の概要」 東京労働局職員
パネルティスカッション「地域に根ざした非正規雇用の労働者の適切な雇用管理、キャリアアップに向けて」
 
個々人の生産性をどう測定するかは難しく、結局は、「やる気」で判断するしかないこと。
では、非正規雇用労働者の「やる気」を高めるにはどうすれば良いかというと、調査結果によれば、「賃金」「労働時間」「福利厚生」よりも、「能力開発」「仕事内容」「人間関係」が有効であるらしいこと。
能力開発の要は、目標を与えて、評価し、適正な処遇をすることであること、などなど。
とても参考になりました。
パネリストの独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の小野晶子さんは、プレゼン力抜群で、将来有望な研究者です。
 
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中小企業モデル賃金制度セミナー

厚生労働省委託「中小企業モデル賃金制度セミナー」に参加しました。

高齢者人材活用戦略にもとづく賃金制度設計の方法
第1部 高齢者人材活用戦略にもとづく賃金制度設計の方針
第2部 賃金制度設計方法の解説

要素別点数法による職務評価に応じた賃金制度の構築が目的ですが、3回目なのでちょっと飽きてきました。
金曜日にもまたあります。

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労働法入門

水町勇一郎さんの「労働法入門」を読了しました。
一風変わった教科書と言うべきか…各章のはじめに水町さん自身のかなり「私的」な事柄が書かれていて、思わず引き込まれてしまいました。
以下、第8章のはじめの部分からの引用です。

2011年4月12日、日本の労働法を揺るがしかねない出来事があった。労働委員会(それを理論的に支える労働法学者)と裁判所(の一部の裁判官)との戦いに、一つの決着がつけられたのである。
舞台に出ているオペラ歌手は労働者か。業務委託契約で製品のメンテナンスを行うカスタマーエンジニアに労働組合法の適用はあるのか。労働委員会はいずれも労働者だと認め、労働組合法の適用があるものとした。これに対し、オペラ歌手については東京地裁と東京高裁が、カスタマーエンジニアにについては東京高裁が、労働者であることを否定し、会社(法人)はこれらの人が加入する労働組合と団体交渉をする義務を負わないと判断した。この戦いは、労働の実態を重視して働き方からすれば労働者に他ならないと主張する多くの労働法学者と、契約形式を重視して契約上一定の自由や裁量を認められた独立した業務受託者だと判断した一部の裁判官との解釈論争ともいえる現象を巻き起こした。
東日本大震災から約1か月が経過した同日、最高裁判所の第三小法廷は、労働の実態を重視して労働者性を判断すべきとの見解を全員一致で示し、労働委員会に軍配をあげた。日本の労働法学を牽引し、中央労働委員会会長として両事件の上告人となっていた菅野和夫の完勝であった。日本の労働法学は揺るがなかった。

菅野先生へのオマージュに溢れる素敵な一冊です。

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お年賀2014

謹んで新春のお慶びを申し上げます

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限定正社員、安易な解雇はダメ

今年1年間を振り返るような記事を書きたかったのですが、私にはまだまだ荷が重いので、私にとって最も印象深かった…いや、私に力を与えてくれた、以下の新聞記事を掲載しておきます。
2013年8月2日付朝日新聞からの引用です。

雇用ルールどうあるべきか 限定正社員、安易な解雇はダメ 
長期雇用の慣行を改めて、転職が活発な労働市場に変えようという議論が盛んだ。
政府も、労働市場の流動化を進めるための方策を次々と検討課題にあげている。
日本の雇用ルールはどうあるべきなのか。
菅野和夫・労働政策研究・研修機構(JILPT)理事長に聞いた。
――雇用ルールを変えれば現実は変わるのでしょうか?
「労働法は、世論の支持と労使の理解があって機能する。
長期雇用慣行は労使がつくり上げてきた。
働く側だけでなく企業側も長期雇用慣行を支持しており、裁判所はこれを反映して判断している。
若い時に人材投資をして長く能力発揮してもらう企業側のメリットは今でも大きい。
非正規労働者が増えている中でも、中核的な正社員では長期雇用慣行は揺らいでいない。
その実態がいけないと言っても、現実は動かない」
――解雇ルールを決めた労働契約法16条を変えるべきだという意見があります。
「労働契約法16条は、権利乱用の禁止という民法の一般原則を労働関係に応用したもの。
条文自体は、不合理な解雇や不相当な解雇は無効という当たり前のルール。
変更の余地はないだろう」
――整理解雇の基準への企業の不満は根強いようです。
「整理解雇は、裁判例の積み重ねの中で、(1)人員整理の必要性(2)解雇回避努力(3)人選の合理性(4)労働組合などとの協議や説明、という四つの項目に着目して判断されている。
これは、大企業の労使が石油危機以降の雇用調整の中でつくり上げた慣行や手法を裁判所が取り入れたもの。
解雇は制約されるが、広範な人事権を手にするので企業側にもメリットのあるルールだ。
『整理解雇をしやすくしてくれ』というだけでは、いいとこどりだ。
基準が明確ではないというが、事案に応じた具体的な判断とならざるを得ない」
――政府の規制改革会議は、勤務地などが限定された「限定正社員」の普及を提案しています。
そのルールは必要でしょうか。
「社員区分をどうつくって、どう処遇するかは、労使が決めること。
国が決めることではない。政府の役割は、好事例を調査して情報を提供することだ。
多様な正社員をつくることは、正規・非正規という労働市場の二極化を是正する視点からも大きな政策課題であることは確か。
多様なキャリア選択ができる労働市場を、官民協力して作り上げてゆくことが大事だ」
「限定正社員にも労働契約法16条は適用される。
勤務地が限定された正社員でも、働いていた支店がなくなったからといって、当然のように解雇できるわけではない。
他に異動できるか、本人の希望や適性も踏まえながら検討しなくてはいけない。
解雇ルール自体を、地域限定の有無で異なるものとするようなことは乱暴だと思う」
――解雇の金銭解決制度は必要でしょうか。
「解雇紛争については、行政のあっせん制度と労働審判があって、裁判になる前にうまく解決されている。
行政のあっせんは非常に早く金銭で解決している。
労働審判はもう少し丁寧だが、裁判よりも早いし、大部分が金銭解決になっている。
これは、事実上、金銭解決の仕組みがあるといってもよい状況だ。
裁判になっても判決までいくとは限らないので、その場合に備えて新たに金銭解決の制度をつくる必要性は乏しいと思う」
「金銭解決の制度は、技術的にも難しい。
解雇が無効とされてから金銭解決を労使が申し立てる仕組みだと、時間がかかる。
解雇無効判決と金銭解決の申し立てを同時にできるようにしても、企業が「もし無効ならば金銭解決してください」と弱みを見せるだろうか。
一番難しいのは金額の基準。
解雇の理由も企業規模もいろいろあり、妥当な基準を作るのは難しい」