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2015年7月

嘘に誠

鶴見俊輔さんが7月20日にお亡くなりになりました。歴史社会学者の小熊英二さんが素晴らしい追悼文を朝日新聞に寄稿されていたので以下に転載しておきます。

 さる7月20日死去した鶴見俊輔氏には、日本の慣用句を寸評した「かるたの話」という文章がある。そこで彼は、「うそから出たまこと」という慣用句に寄せて、こう述べている。
 「(戦後に)新しく、平和憲法という嘘が公布された。これはアメリカに強制されて、日本人が自由意志でつくったように見せかけたもので、まぎれもなく嘘である。発布当時嘘だったと同じく、今も嘘である。しかし、この嘘から誠を出したいという運動を、私たちは支持する」
 鶴見は、自分の代表作は『共同研究 転向』だと述べていた。そこで扱われたのは、戦前に国家主義に転向した左翼知識人と、戦後に占領軍へ追放解除申請を書いた右翼や政治家たちだった。鶴見はこう述べている。「赤尾敏とか、笹川良一とか、みんな申請書を書いているんだよ。だいたいは、私は昔から民主主義者だ、追放解除してほしい、そういうものだよね」(『戦争が遺したもの』)
 鶴見は「優等生」を嫌った。優等生は、先生が期待する答案を書くのがうまい。先生が変われば、まったく違う答案を書く。教師が正しいと教えた「枠組み」に従う。
その「枠組み」には、共産主義や国家主義など、あらゆる「主義」が該当する。「日の丸を掲げないのは非国民だ」「マルクス主義を支持しないのは反革命だ」といった枠組みを、鶴見は生涯嫌った。彼はその対極として、「作法」や「党派」から自由な、大衆文化や市民運動を好んだ。
鶴見にとって、枠組みを疑う懐疑と、ベトナム反戦や憲法九条擁護の運動は、矛盾していなかった。その理由を、南方戦線での従軍経験もある彼は、こう述べている。
「私は、戦争中から殺人をさけたいということを第一の目標としてきた。その信念の根拠を自分の中で求めてゆくと、人間には状況の最終的な計算をする能力がないのだから、他の人間を存在としてなくしてしまうだけの十分の根拠をもちえないということだ。殺人に反対するという自分の根拠は、懐疑主義の中にある。……まして戦争という方式で、国家の命令でつれだされて、自分の知らない人を殺すために活動することには強く反対したい」(「すわりこみまで」)
鶴見は運動においても、新しい「主義」を次々と輸入し、次々と乗り換える作法を嫌った。彼が好んだのは、古なじみの慣用句や通俗的な文化に、意想外の意味を与えていく大衆の想像力だった。彼は西洋思想を掲げる学生運動家を好まなかったが、1960年代の学生たちがヤクザ映画を愛し、製作者の意図をこえた意味を与えていることには共感を示した。
国という枠組みにこだわらない彼は、日本の外にも、そうした想像力を見いだした。その一つが、征服者が押しつけた聖母像を、メキシコ先住民たちが褐色の肌の女神につくりかえた「グアダルーペの聖母」である。
 そして日本の大衆も、アメリカが押しつけた憲法を、アメリカの意図をこえて受容した。追放解除を経た政治家が首相となり、アメリカとの安保条約を改定しようとしたとき、彼らはその憲法を掲げて抗議した。恐らく鶴見はそこに、「嘘から誠を出したいという運動」をみただろう。
 鶴見の肉体が滅んだ4日後の24日金曜、夜の国会前を埋めた万余の群衆は、「憲法守れ」「民主主義ってなんだ」「誰も殺すな」と叫んでいた。これらの使い古された慣用句に、大衆が新しい意味を与えている場面をみたら、鶴見は喜んだだろう。たとえ彼らが、「鶴見俊輔」などという名前を、一度も聞いたことがなかったとしても。

過労死等の防止のための対策に関する大綱

政府は24日、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」を閣議決定しました。
これは、昨年11月に施行された「過労死等防止対策推進法」に基づき、「調査研究等」「啓発」「相談体制の整備等」「民間団体の活動に対する支援」の4つの対策を効果的に推進するため、今後おおむね3年間の取組について定めたものです。 
ただし、遺族らが求めていた長時間労働の防止につながる新たな数値目標は盛り込まれませんでした。

若年女性の就業意識等に関する調査

大阪府(商工労働部)は16日、「若年女性の就業意識等に関する調査結果報告書―女性が輝く社会の実現に向けて―」を公表しています。本調査は、大阪府が大阪大学と共同で実施した調査結果をまとめたもので、若年女性の就業の現状、働くことや仕事に関する意識、女性の雇用・活躍に向けた企業の取組の現状と今後への課題などを明らかにしています。
調査結果の概要の中から気になったものを以下に挙げておきます。
・働き始める前は、能力や人間関係の不安が大きい。
・「できれば仕事はしたくない」人は、「将来よりも今が大事」「子供のことを考えれば女性は働かない方が良い」「専業主婦であるほうが女性として幸せ」「働くスキルに自信がない」「対人コミュニケーション面で自信がない」などと考えている。
・初職を1年で辞める人が多く、定年まで働きたいと考えていた人でも5年目までに約半数が離職する。
・離職者の半数以上が、能力や対人関係に自信がなく、再び働き始めようとした時に、健康や対人関係の不安を持つ可能性が高い。
・無職女性のうち積極的に仕事を求めていない層において、世帯収入が多い傾向にあるとはいえない。
・離職期間の長期化は就職を困難化させ、加齢によって求職活動に戻りにくくなる。

ブラック求人対策を 労働団体が申し入れ

朝日新聞から引用しておきます。
ハローワークの求人票で示された勤務条件と、実際の勤務実態が大きく異なる「ブラック求人」ともいえるケースの多くが野放しにされているとして、労働相談を受ける団体の関係者らが13日、厚生労働省に対して監視や取り締まりを強化するよう申し入れた。
申し入れのきっかけは、求人条件と異なる長時間労働の末、事故で亡くなった東京都内の男性の事例だ。
男性は、「残業は月平均20時間」などと書かれたハローワークの求人票をみて就職した。しかし実際は月の残業時間が100時間を超えるなど長時間労働が続き、帰宅途中に交通事故で亡くなった。母の渡辺淳子さんは「ハローワークの求人なら安心」などと男性に助言していたが、今は「求人票に真実が記載されていれば今回の会社を選ぶことはなかった」と悔やむ。渡辺さんは会社に損害賠償を求めて提訴している。
厚労省によると、2014年度に求人票について全国のハローワークに寄せられた苦情や相談は1万2252件で、前年を3割上回った。36%の4360件が求人票の内容が実際とは異なるという内容で、賃金が低かったり、労働時間が長かったりしていたという。
職業安定法は、求人時に労働条件の明示を義務づけている。求人に偽りがあることが確認できればハローワークは企業に直すように指導し、従わない場合は不受理にする。また、企業がハローワークなどを通さずに直接、虚偽の条件を示して求人をした場合などは罰則を科している。
しかし、虚偽条件の求人などで同省が刑事告発したケースはゼロだという。
労働相談にのるNPO法人POSSE(ポッセ)や大学教授らでつくる「ブラック企業対策プロジェクト」や渡辺さんらは13日、まずはハローワークの虚偽求人に対応するよう厚労省に申し入れた。労働基準監督署などから告発を受けている会社の求人票を掲載しない、求人票と実際の労働条件が違った場合はペナルティーを設ける、などの対応を求めた。
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雇用改革の動きと今後の人材サービスを考える

2015年第3回派遣・請負問題勉強会に参加してきました。
講演1「2025年の労働市場を展望する -その時、人材サービス産業は?-」中村天江主任研究員
講演2「人材獲得競争における世界・中国・日本 -IT産業で起こっていること」川端望教授
いつもとは趣の違った話でしたが、なかなか興味深くお聞きすることができました。

オリンパス配置転換事件

これも気になる事件でした。朝日新聞(7月10日付)からの引用です。
「退職拒否で配転」請求棄却
オリンパスの現役社員が「退職勧奨を拒否したら不当な配置転換をされた」として、同社に配転の無効などを求めた訴訟の判決が9日、東京地裁であった。戸畑賢太裁判官は「必要性があって会社が新設した部署への配転だった」として、社員の請求を棄却した。
訴えたのは、石川善久さん(51)。配転先の上司も「部下がいない新部署に配置された」として会社と訴訟で争っていたため、石川さんは「訴訟対策で部下として送り込まれた」とも主張していた。これに対し、判決は「主張を裏付ける証拠はない」と指摘。石川さんに配転先の業務の知識や適性があるとして「配転は会社に認められた裁量の範囲内だ」と結論づけた。

2013年7月27日の記事も掲載しておきます。
オリンパス「会社提訴した人の部下に」 退職拒否社員に発令
「会社と訴訟をやっているあの人の下に異動せよ」――。オリンパスの現役社員が「退職勧奨を拒否したら不当な配置転換をされた」として、会社を相手に異動の無効などを求める訴えを近く東京地裁に起こす。異動先の部署の上司は「部下のいない『名ばかりリーダーだ』」として会社と裁判中で、社員は「その部署に部下として送り込まれるのは、訴訟対策のための生け贄(にえ)だ」と主張している。
提訴するのはオリンパスの石川善久さん(50)。
訴状などによると、石川さんの異動先の品質教育チームでリーダーを務めるのは浜田正晴さん(52)。浜田さんは2007年に企業倫理に反すると思われる上司の行動を社内のコンプライアンス室に通報したところ、チームリーダーの役職を外されて段違いの部署に異動させられた。会社を相手取って訴訟を起こし、昨年6月、最高裁で勝訴が確定。12月1日付でチームリーダーに復帰した。新設の品質教育チームを率いることになったが、同チームには部下が1人もおらず、浜田さんは会社を相手に再び訴訟を起こしている。
損失隠し事件で財務内容が悪化したオリンパスは、昨年秋、希望退職を募った。開発部門にいた石川さんは5回の退職勧奨を断ったところ、昨年12月に品質教育チームへの異動を内示された。新たな職場の上司が誰かを尋ねると「訴訟を起こしてどうのこうのやってたあの浜田さん」と告げられたという。
両者は面識がなかったが、異動後に浜田さんが石川さんの相談に乗って弁護士を紹介。提訴することになった。

 

 

 

 
 

ストレスチェック制度簡単導入マニュアル

厚生労働省は、12月より施行されるストレスチェック制度の導入マニュアルを公開しています。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf
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女性のための全国 一斉労働相談~STOP!セクハラ・パワハラ・マタハラ

連合は、6月11日~12日に実施した全国一斉労働相談ダイヤル「女性のための全国 一斉労働相談~STOP!セクハラ・パワハラ・マタハラ」の集計報告を公表しています。
http://www.jtuc-rengo.or.jp/soudan/soudan_report/data/20150611-20150612.pdf
2日間で500件以上の相談が寄せられたそうです。
業種別では、「医療・福祉」からの相談が20.2%(女性からの相談に限ると、「医療・福祉」は25.3%)と最も多く、医療や介護の現場で働く女性が、厳しい職場環境に直面していることが浮き彫りになったようです。