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2013年12月

自己責任

――これから解雇は増えるでしょうか。
「解雇はどんどん増やしたほうがいいと思うんです」
――えっ。
「解雇を絶対的な悪だと否定しないほうがいい。解雇できないと、新たな雇用もできないですから。いったん雇用したが最後、会社にまったく利益をもたらさなくても定年までいるというのは、これは最悪「ですからね」
――おっしゃっている解雇の基準は、「仕事ができない」ということですね。
「会社を繁栄させるには、仕事ができる百人力の人にいていただき、その逆のマイナス百人力の人には去っていただく。これは常にしていかないといけない。そのためには人の評価というものが非常に重要なのです。それを国が制度かなんかで邪魔してもらったら困る。日本が戦後ここまで豊かになったのは、企業ががんばってきたからです。その企業を殺すようなことをしてはいけない。働く人にとっても、仕事を変わることでまったく別の才能が開く、ということもあるはずです」
――「解雇ルールの明示」は、ずっと思っておられたことですか。
「そうです。だいたい、雇用する権利はあるけれど、解雇する権利はないなんて、おかしいことだと思いますし、解雇によって新たな雇用が広がる可能性が十分にあります」
――いえ、会社に解雇権がないということは、労働組合を含めて誰も言っていないわけで、言っているのは「不当解雇があってはダメだ」ということであり……
「不当解雇って、なんでしょう?」
――邪な心で解雇することです。
「たとえば、どのようなことですか?」
――内部告発への報復で解雇をする、とか。
「きちんとした会社は、そのような法律違反はしません」
――いや、実際にしています。
「では、それはまともな会社ではないわけです」
――労働組合を作ったら見せしめに解雇する、とか。
「いまどき、労働組合を作るという、そのような話はないと思いますが……」
――基本的にはもう労働組合は必要ではない、これからは会社対個人の時代だというご発言をしておられますが、会社と個人は対等でありえますか。
「どうしてでしょう? 辞める権利はあるし、入社しない権利もある。お願いしますといって、来ていただいたわけじゃない。いやだと思ったら、いつでも辞められるでしょう。日本はまだ豊かな国です。いくらでも勉強する機会がある。そして能力をつければ、いくらでも働く場所があります」
(途中省略)
――最後に、労働の安定とは、やはり雇用の期間が安定していることだと思うのですが。いつ切られるかわからないという状態では、安心して働けないのでは。
「私はそもそも安定したものはないと思っています。あした安全だという保証はない。極端な話ですが、地震が起こるか、車がぶつかってくるか、わからないわけです。安定を望むなら、それを企業に求めるのではなく、やはり自分の努力です。それしかありません。私も下手をすると明日でもつぶれるかもしれないと思って企業経営しています。個人も自己責任でがんばる。みんな自己責任で相競いましょう。そして、そこから一人立ちできない人は、豊かな社会が助けてあげましょう、と。過激なことを申しあげるかもしれませんが、私にとっては普通の話です」
――そういうお気持ちを持たれたのは、いつからですか。
「子どものときからです。私は昭和10年生まれ。10歳のときに終戦を迎え、天皇陛下バンザイが、一日で、マッカーサー万歳になったんです。国なんて信用できない、自分の足で立たなければと、そのときに思いました。私の原点はそれです。国はつぶれる、会社もつぶれる。個人がしっかりしなければならない。みんなが一人ずつ自分の足で立って、自己責任で、自由闊達にやろう。そして、もっと世界へ貢献する国民にならないと。それが、日本社会の中でクリンチ(取っ組み合い)している」

「ルポ 解雇 ―この国でいま起きていること―」のクライマックス、総合規制改革会議議長の宮内義彦氏へのインタビュー場面です。
インタビューの前半に「鉛筆型の人事管理」(日経連が1995年に発表した「新時代の日本的経営」の原形のようなもの)についての話があって、そこも大変興味深いのですが、字数の都合でカットしました。
労働の現場の状況がわかってないという欠点がありますが、大変重みのある意見であることは確かで、これを乗り越えるには、労使の関係、そして社会がどうあるべきかについてのヴィジョンを対案として示す必要があると思います。 

ルポ 解雇

島本慈子さんの「ルポ 解雇 ―この国でいま起きていること―」を読了しました。
この本は2003年10月に発行されたものなので、今となってはちょっと古いかなとも思いましたが、2003年6月の労基法改正で解雇ルール(解雇権濫用法理)が法律上明文化された際、労働政策審議会・労働条件分科会の審議を経て発表された法案の段階では、「使用者は、この法律又は他の法律の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合を除き、労働者を解雇することができる。ただし、その解雇が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」というものであったのが、猛反発を受けた結果「解雇することができる」という文言が削除されたという経緯を確認でき、とても有意義でした。
また、この本のクライマックスは、規制緩和推進の本丸とも言うべき総合規制改革会議議長の宮内義彦氏へのインタビューの場面なのですが、それについては、かなり長くなりそうなので次の記事で改めて述べることにします。

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